小規模企業共済のすゝめ
小規模企業共済のすゝめ
この共済を使うべき人の特徴
- 小規模企業の役員または個人事業主の方 ※
- 課税所得がある方
- 資金繰りに少しでも余裕のある方
※加入資格に関しては以下のURLを確認してください
加入資格|小規模企業共済(中小機構) (smrj.go.jp)
この共済の特徴
- 毎月千円~7万円を掛金として積み立てる
- 掛金は全額所得控除になる
- 掛金に対して年間1%の利息が付く
- 掛金の受取方法として、退職所得か公的年金等どちらかを選べる ※
この共済と似ているiDeCoとの違い
- iDeCoは投資信託、この共済は中小機構にお金を預ける
- iDeCoは元本割れの可能性があるが、この共済では元本保証&予定金利1%となる
- iDeCoは60歳以上でないと掛金が返ってこないが、この共済は掛始めてから20年経過、または廃業時に掛金が返ってくる ※
※ 解約時の掛金の受取りの詳細に関しては以下をご覧ください
共済金(解約手当金)について|小規模企業共済(中小機構) (smrj.go.jp)
倒産防止共済がお勧めできない理由
取引先が倒産して、売掛金の回収ができない。資金繰りが悪化して自分も倒産・・・
なんてことが起こらないようにするのが中小企業倒産防止共済です。
ちなみに正式名称が「中小企業倒産防止共済」で
愛称が「経営セーフティ共済」らしいです
そしてこの後の文章では「倒産防止共済」と書いてありますが同じ意味です。
そして「節税」というキーワードで倒産防止共済を利用しようとしている人は前半の赤字部分と後半だけ読んでもOKです。
倒産防止共済では毎月5千円~20万円の掛金を積み立てることができます。
(掛金は経費にできる!)
そして取引先が倒産した場合に
- 未回収の売掛金額+倒産した取引先への依存度による金額
- 掛金合計の10倍の額
のうち
少ないほうの金額を5~7年の間、無利子、無担保で借り入れることが可能!
(借り入れ可能期間が過ぎたら、年14.6%の違約金)
この仕組みによって資金繰り悪化を防ぎ、連鎖倒産を防止するらしいです。
さらに、40か月以上掛け続けてから解約すると掛けた金額の満額を一括で受け取ることができます。そして、40か月未満でも12か月以上掛け続ければ75~100%の割合で一括での受け取りが可能です。
(受取金額は所得になる!)
例えば
- 倒産防止共済を毎月5万円×40か月(200万円)やっている。
- 取引先が倒産して240万円の売掛金が回収できない。
- 今までその取引先とは月平均100万円の取引をしており、売り上げの40%以上を占めていた。
という条件では
- 240万円(貸し倒れ金)+200万円(メインの取引先が倒産のため)=440万円
- 掛金200万円×10=2000万円
1と2のうち
低いほうの440万円を5年間無利子無担保で借り入れることができます。
無利子無担保といっても、償還期間までに支払いができないようなことが続けば、実質の担保である掛金から支払いが行われますし、借り入れの際に、借入額の10%が掛け金から差し引かれて解約時に受け取る権利を失います・・・
つまり5年間440万円借り入れた場合、10%の44万円が掛け金から差し引かれます。
この差し引かれる金額を利息の前払いだとすると、年利2%ほどになります。
しかし440万円のうち240万円は掛金として預けているので、実際は
440万円ー240万円=200万円 なので
200万円借りて44万円払ったということになります。
この場合利息に直すと5%くらい?
になりますが、それでも一般的な借り入れ金利に比べれば低いと思われます。
まとめると倒産防止共済は
「もし取引先が倒産したりして売掛金回収できないと資金繰りが大変だよね!」
「掛金と未回収の売掛金に応じたお金を5年~7年間ほとんど無利子、無担保で貸してあげるよ!」
的な制度になる。
僕の場合
貸されても使い道に困る・・・
翌月末には売掛金回収できてるし・・・
メインの取引先がなくなったら今の仕事辞めると思うし・・・
たぶんニートになる!(確信)
というのは、ほんの少し冗談ですが、
僕のような
の場合は、取引先倒産による未回収の売掛金が大きくならないので、いざという時に借り入れできるメリットは薄くなりがちです。
後半
だけど倒産防止共済のメリットは無利子無担保の貸付だけではありません。
おそらく大体の人が「節税」というキーワードで
「経営セーフティ共済おすすめ!」
「倒産防止共済はやらなきゃ損!」
みたいなことを聞いたことがあると思います・・・
結論から言うと倒産防止共済を節税目的だけに使うのは微妙です。
前半の赤字部分に書いてあるのですが、倒産防止共済の節税ポイントは
- 掛金は経費にできる!
- 受取金額は所得になる!
です。
税金の計算方法は、
- 所得=売上ー経費
- 課税所得=所得ー各種控除
- 税金=課税所得×税率
です。
経費が多ければ所得が減ります。
所得が減れば課税所得が減ります。
課税所得が減れば税金が減ります。
なので「掛金は経費にできる」倒産防止共済をやればやるほど税金は減ります。
税金は減らしたいですよね・・・
問題は解約時に掛金を受け取る時です。
「受取金額は所得になる」なので
受け取れば所得が増えます。
所得が増えれば課税所得が増えます。
課税所得が増えれば税金が増えます。
税金は増やしたくないですよね・・・
ただ受け取らないわけにもいきません。
少しお得に借金ができるだけの共済に、掛け捨てで入るわけにはいきません。
そして考えられたのが、倒産防止共済節税スキーム!(適当)です。
この倒産防止共済節税スキームを個人事業主の経営者のポンタ君にやってもらいましょう。
ある年の9月ごろ、ポンタ君の会社は尋常じゃないぐらい仕事が来て売上が高くなり、ポンタ君の所得が増えました。所得税は超過累進課税です。超過累進課税ということは、所得が高ければ高いほど税率が上がります。ポンタ君の年間の予想所得税率を計算したところ最高税率が40%!いつも所得税率20%ほどのポンタ君はびっくりしてしまいました。
そこでポンタ君は倒産防止共済で月額10万円を12か月分を前払いして、合計120万円を全額その年の経費にしました。経費にしたので120万円分にかかっていた33%分の所得税である約40万円を節税できました。
その次の年も、尋常じゃないほど仕事が来て、所得税の最高税率は33%でした。
そこで、ポンタ君は、また去年と同じことをして40万円ほど節税できました。
その次の年も、40万円ほど節税できました。
その次の年も、40万円ほど節税できました。
その次の年から、ポンタ君の会社は平和になり売り上げも落ち着き、節税の必要があまりなくなりました。倒産防止共済を40か月以上掛けていると、掛金の掛け止めができるので、ポンタ君は掛け止めをして、会社が赤字になったら共済を解約しようと考えました。
その数年後に、なんと世界大恐慌が起きて、ポンタ君の会社の売上は、ほとんどなくなりました。ポンタ君は従業員をリストラせずに頑張ったため、家賃や給料支払いで500万円の赤字になりました。
そこでポンタ君は倒産防止共済を解約して480万円を受け取りました。500万円の赤字、つまり所得がマイナス500万円なので、
所得=-500万円+480万円
なので所得はマイナス20万円。
所得がマイナスなので、その年の所得税は0です。
こうしてポンタ君は倒産防止共済を480万円掛けて、
その後解約することにより40万円×4で合計160万円の節税を行うことができました。
めでたしめでたし・・・
これが倒産防止共済節税スキームです。
この記事のタイトルにある通り、この節税スキームには多少問題があると思うので、僕は倒産防止共済をやらないでおいてます。
問題点を箇条書きすると
- 倒産防止共済をやり始めてから40か月以降でなければ満額返ってこない
- 倒産防止共済なしでも繰越欠損金を使って赤字はその後の黒字と相殺できる
- 所得が下がらず、ずっと安定している場合、節税どころか税の支払いが増える場合がある
1に関して、
倒産防止共済は掛け始めてから40か月未満で解約すると、多くの場合満額返ってきません。倒産防止共済を始めて40か月以内に赤字の年が出て共済を解約した場合、目減りした額を受け取ることになり、結果的に損をする場合があります。
2に関して、
倒産防止共済なしでも、青色申告している人なら繰越欠損金というものを使って、赤字を個人事業主なら3年、法人なら10年まで翌年に繰り越すことができます。繰り越した赤字は、その年に出た黒字と相殺することができます。この繰越欠損金の制度だけである程度所得を平均化して節税ができると思います。
3に関して、
これが僕の倒産防止共済をやらない最大の理由なのですが、この共済は
- 始めてから40か月以降に赤字が出るぐらい所得が減らなければ税の支払いが増える可能性があり解約のタイミングが難しい。
- さらに、始めてから40か月以内は所得が少ないと節税にならないので始めるタイミングも難しい。
倒産防止共済は上限800万円まで掛けることができます。解約時には一括で受け取らなくてはいけません。800万円掛けた状態で赤字が出ない場合、解約時に所得が少なくとも800万円を超えることになります。普段から所得400万円の個人事業主の方などは、解約時に所得が跳ね上がり、結果的に税の支払いが増えることになってしまうこともあります。
そしてもともとこのスキームは所得を減らして節税するものなので、所得がなければ節税はできません。しかしこの共済は始めてから40か月経たないと掛け止めができません。40か月未満で減額もできますが相応の理由が必要みたいです。
ということで倒産防止共済を節税に使う場合、僕の考えとしては、
この節税は、将来自分の事業が赤字もしくは所得が普段よりかなり低くなることを想定して行うものなので、所得が減らない場合、税の支払いが多くなる可能性があります。
赤字を想定するのは大事ですが、おそらく僕の場合は固定費がほとんどないので赤字が出ません。絶対ではないですが・・・
手間をかけて共済に入ったとしても結局支払い税額が高くなる可能性があるなら、やらなくてもいいかなとなんとなく思っています。
ただし、僕自身、税の支払いが多くなるリスクをが多少あっても倒産防止共済で月5万円を掛けて40か月で掛け止めして、所得が低い年に200万円を受け取るぐらいはやってもいいのかなとも思っています。皆さんも今までの所得や、今後の所得予想などから、この共済を検討してみてください。